■(その1)「膝の水」について
■(その2)痛みに対して「あたためる?」それとも「冷やす?」
■(その3)レントゲンは撮らないの?
■(その4)注射の後は「お風呂に入っていいの?」
■(その5)先生は「どうやって痩せたの?」
■(その6)話題の「サプリメント」って効くの?
■(その7)日赤?それとも高島市民病院?
■(その8)痛み止めはその場しのぎ?
■(その9)学生さん、診察室へはおひとりで!
■(その10)喫煙は痛み治療にも不利ですよ
■(その11)卵は1日1個まで?って本当?
■(その12)「こむらがえり」って予防できるの?
■(その13)「胸・あばら」をぶつけられた方へ
■(その14)高島市医師会長に就任し、2年ちょっとが経ちました
(その1)「膝の水」
日常診療で膝に水がたまった人をよくおみかけしますが、何も慌てたり動揺したりする必要はありません。
関節には正常な状態でもごく少量の水(「関節液」といいます)がたまっていますが、何らかのきっかけ(膝をねじった、長時間正座をした、不安定な場所を歩いた・・・など)で関節液がたくさん生産されてしまうと関節の袋の中にたまってしまうのです。水がたまった状態が長く続くと膝関節がガタつきやすいため、水を減らす治療をしたほうがよいのです。
当院では、まずは漢方薬「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」を数週間のんでいただく治療をおすすめしています。これによりたいていの方の水は減ってきますが、減らない方は漢方薬を変更したり、注射器で水を抜きとったりする治療も併用します。注射で水を抜く治療は1回限りで終わることは少なく、何度か水を抜く必要があるため、多くの方は「膝の水を抜くと癖になる」と誤解されているようですが、根気よく続ければ、やがて水はたまらなくなってきます。なお、注射をした当日も入浴していただいてかまいません。
水がたまっている間も平坦な場所を歩いてもらってかまいませんし、日常の活動を維持するほうがむしろ早く治ります。正座も可能ならやってもかまいません。
「膝の痛み」は「水がたまる」ことによってだけ起こるわけではなく、過労・冷えなどにより太もも、ふくらはぎ、おしりの筋肉が固くこわばった結果、膝に痛みがおこる場合もありますので、その場合はそのこわばった場所に局所麻酔の注射をする(「トリガーポイント注射」といいます)と痛みがラクになる場合がありますのでご相談ください。
いずれにしても人間は歩くことができなければイキイキと生きているとはいえません。高島の皆さんはどこへいくのも車を使う方が多く、歩く量が少なくなっている方がたくさんおられます。すこしでも多く歩く習慣を維持するようにしましょう。
膝の水が貯まり続ける原因の1つとしてアレルギーの関与もいわれています。食事内容の見直しなどもしてみるとよいかもしれません。診察室でご相談ください。
2024年10月1日改訂
(その2)「あたためる?」それとも「冷やす?」
日頃、外来診療をしておりますと、「昨日痛みがでたのですが、痛いところを温めてしまったのがいけなかったのでしょうか?」とか、「腰痛に冷シップをはってしまったのでかえって痛くなってしまいました」などとおっしゃる方が少なくありません。
一般的に「『急性』の痛みは冷やすとよい。『慢性』の痛みは温めるとよい。」といわれていますが、どこからどこまでが「急性」で、どこからが「慢性」かが、うまく判断できませんよね。結論から申し上げますと、実際貼ってみて「心地よく感じる」シップならなんでもよいのです。
いわゆる「温シップ」は通常の「冷シップ」にトウガラシの1つの成分であるカプサイシンを練り込んだだけのもので、貼り薬のヒヤッとする感覚をやわらげてくれますが、実際に患部をあたためるほどの力はありません。ですから、間違って貼ったとしても症状が悪化する心配はありません。患部は「あたためたり、冷やしたりいろいろすればよい」のです。
日本人が健康で長生きである理由の1つに「四季がある」ことがあげられます。寒いときもあれば暑いときもある、その温度変化に対応しようとして体の調子が活発になると考えれば、1日・1週間・1ヶ月といった短い期間の中でも寒いとき、熱いときがあってもよい、とおおらかに考えたらよいと思います。寒い地域に住む人がより病気になりやすいわけではありません。ですから、厚着しすぎないようにしましょう。「冷やしてはいけない」と思い込み何枚も衣服を重ね着している方もおられますが、中で汗をかき、その気化熱によりかえって冷えてしまっている人もおられます。どうしてもということなら普通の腹巻きがおすすめです。
外用貼付剤の分類として「パップ剤」と「テープ剤」という分類もあります。
「パップ剤」は貼った瞬間ひんやりし、はがすときに力は不要ですが、よく動く場所にはるとずれやすい欠点があります。
「テープ剤」は貼った瞬間の冷感はなく数分してからスーッとした感じがでてきます。粘着力があり、患部への薬剤浸透性にもすぐれています。
どちらがいいかはこれも好みですので、実際に貼ってみて心地よいほうを使ってみてください。
あと、「貼り薬を1袋(7枚入り)いっぺんに全部はるんや。」と自慢される方がたまにおられますが、一度に貼るのは2枚までにしましょう。2枚貼ると痛み止めの飲み薬を1錠飲むのと同等の血中濃度になるといわれていますので副作用も出やすくなります。
また、お風呂に入るとき「痛い部位(手や足)を湯の中につけない」、という人が結構おられますが、患部を湯につけなくても心臓からあたたまった血液が患部にながれこむのでこの行為は意味がありません。安心して患部をお湯につけてください。
2024年10月1日改訂
(その3)レントゲンは撮らないの?
当院は他の医療機関と比べてレントゲン検査をおすすめすることがあまりありません。院内にはレントゲンの撮影器械が無いと思っておられるかたすらおられます。でも実はちゃんとあるのですよ。
よく、これまでに他の医療機関でレントゲンをとってもらい「背中の骨と骨の間隔がせまい」「骨が神経にあたっている」「骨が変形している」「ヘルニアのケがある」「軟骨がすりへっている」などといわれたことをずっと記憶しておられ、「自分は人より骨が悪いのだ」と思い込んでおられる方がいらっしゃいますが、心配はありません。「画像検査の異常」と「痛み」は必ずしも一致しないということがわかってきたのです。
レントゲンをとるべき病気は以下の場合に限られます。
・骨折や骨の異常を強く疑うとき
・悪性・感染性疾患を疑うとき
・入院・手術など現在とは別の治療方法を選択しないといけない可能性があるとき
これらの病気はレントゲン、CT、MRIといった画像検査を行い、治療方針を決定しないといけませんが、いわゆる「加齢性」の病気にレントゲン検査は不要で、むしろ治療効果を妨げます。「骨が悪い」から治らないと思い込んでおられるかたは治りが悪くなると思います。
では、痛みの原因はなんでしょうか。大部分の痛みの原因は筋肉(いわゆる「スジ」)であると考えています。スジはレントゲンにはうつりません。仕事やスポーツによる使いすぎや日常生活動作のくせ、加齢、ストレスなどにより筋肉の柔軟性が失われることによって筋肉に「こり」、「硬結」を生じ、その硬結からすこし離れたところの痛みをひきおこすのです。ですからその「こり」を治療によってなくしてやれば痛みがなくなることが多いのです。当院では血の巡りをよくして「こり」をほぐす漢方薬を使ったり、低周波などの電気をあてる物理療法をしたりする以外に、トリガーポイント注射(痛みの引き金になっている筋肉に局所麻酔薬をうちます)という注射の治療を積極的に行ったりしていますのでしつこい痛みにお悩みの方はご相談ください。
2024年10月1日改訂
(その4)お風呂は入ってもいいの?
患者さんに注射をしたその当日に「今日、お風呂に入っていいですか?」と、かなりの確率で尋ねられます。
その答えはもちろん(意外にも?)「入っていいですよ。」です。
古くから『注射の当日にお風呂に入るとバイキンが入る』などといった迷信がいいつたえられてきました。いまでも多くのお医者さんがそういわれます。
しかし、科学的に考えてください。注射のあとの細い穴からバイキンが入るには注射と同じくらいの圧力をその穴にかけないといけませんし、また、お風呂などの水中にいる細菌は体を化膿させたりする力がないことが証明されています。ですからお風呂を我慢することはナンセンスです。
キズを負ったときも全く同様です。キズを水にぬらしても化膿しません。キズが化膿するのは別の感染源があるときです。よく、キズに消毒液を塗る人がいますが、これも「百害あって一利なし」です。消毒液はキズを修復する細胞を破壊することが知られており、キズを負ったときは大量の水道水で洗ってやるほうがよっぽどキズに優しいし、早くキズがなおります。
お風呂にはいってはいけないのは
・体力が普段より著しく低下しているとき
・平熱より2℃以上体温があがっているとき
・キズからだらだら出血しているとき
などに限られます。
お風呂は一番手軽で安上がりな健康維持器具です。安心してお風呂につかってください。
お風呂に入るとき、痛い手足を湯船につけないようにがんばっている方もお見受けしますが、あたたまった血液は心臓から体中にまわっていきますので、無駄な努力といえます。かえってバランスをくずしてひっくりかえってしまう可能性もありますので、注意してください。
2024年10月1日改訂
(その5)先生、どうやって痩せたの?
この医院を開業した当時(今から約18年前です)、私の体重は90kgありました(ちなみに身長は163cmです)。肥満であると自覚していなかったのですが、ある日、減量でスリムになられた有名人のあまりの変貌ぶりをみて「私も挑戦してみたい!」と思い、そこから2年かけて65kgまで減量し、現在に至るまで維持しています。知人や患者さんから「どうやってやせたのですか?」ときかれることが多いので、その方法をお話させていただきます。
1)体重を朝(起床直後)と夜(夕食直後)に計測し、食べた内容と一緒に手帳に記録する。体重は50g単位まで計れるデジタルの体重計を使ってください。
2)炭水化物(≒糖質)を含む食事を減らす(以下、「糖質制限」とよびます)。
糖質制限は最近知名度があがってきましたのでご存じの方もおられると思いますが、おかず(肉・卵・チーズはカロリーを気にせず好きなだけ食べてかまいません)中心の食事をゆっくりと時間をかけて食べ、炭水化物をたっぷり含んでいる米、パン、麺類を極力食べないという食事です。体についた余分な脂肪をもやすためにはたんぱく質・脂質を積極的に取る必要があるのです。アルコール類は糖質量の低いワイン、焼酎、ウイスキーがおすすめです。
私はダイエット後、1年中毎晩ワインを夫婦で1本飲んでいます(休肝日はありません)が、体重は維持できていますし、血液検査の結果も正常です。運動は特に必要ありません。(よく「運動をしないからやせない。」と言い訳する方がいらっしゃいますが、運動だけではやせません。)糖質制限をしだすと血糖値の乱高下がなくなり間食・おやつもほしくなくなります。
いきなり3食とも糖質制限する必要はありません。まずは続けやすい時間の食事の糖質を減らしてみることからはじめてください。ただし、おかずはたっぷり食べてくださいね。そうしないとエネルギー不足になります。とにかく1ヶ月続けてみてください。ダイエットは一生続けられる方法でないとやっても意味がありません。
それから食事は1日3食という回数にこだわる必要はありません。2食でも1食でもOKです。(結婚して奥さんが朝食を用意してくれるようになってから急に太りだしたという方多数おられます。)あと、お腹が「ぐーっ」と鳴ってから食事をする習慣を身につけましょう。この「ぐーっ」と鳴るときに体はやせているのです。いつものごはんの時間がきたから規則的に食事を摂る、というのではやせません。
血糖値が急にあがったりさがったりを繰り返すと動脈硬化や血栓症、認知症をひきおこしやすいといわれています。その意味でも血糖値を安定させる糖質制限は有効ですので、現在適正な体重を保っている人にも糖質制限はおすすめです。糖質制限の方法を詳しくお知りになりたい方は診察室で院長に直接おたずねください。ただし、すでに糖尿病の治療薬を飲んでおられる方がいきなり糖質を制限すると血糖値が下がりすぎる可能性がありますので主治医の先生の理解と許可が絶対に必要です。
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(その6)「サプリメントって効くの?」
テレビを観ていますと「グルコサミン」、「コンドロイチン」、「ヒアルロン酸」「コラーゲン」といった整形外科疾患(筋肉、骨・関節の病気)に効くとうたわれる健康食品・サプリメントのコマーシャルが毎日頻繁に流されています。はたしてこれらはどれだけの効果があるのでしょうか。
ずばり、値段にみあった効果はほとんどないといっていいでしょう。有名な俳優さん、女優さんを使って「健康になった気にさせてくれる」プラセボ(ニセ薬)効果は多少あると思われますが、コストパフォーマンスを考えると割にあわないと思います。(ちなみに医療機関で処方される薬は法律でテレビCMには流れません。)ただし、ビタミン剤、鉄剤などはストレスの多い人や栄養がかたよっている人には効果が多少あるでしょう。
いったん体に取り込まれたサプリメントは胃や腸で分子レベルにまでばらばらに分解され、体中に分配されます。たとえば軟骨は体中の関節にありますから膝の軟骨だけに効くわけではないのです。特定の臓器(たとえば膝)だけに効くということは無いと思ったほうがよいでしょう。他にも「わかめを食べたら髪の毛にいい」とか「スッポンを食べたらお肌がつるつるになる」という類いの話も残念ながら科学的根拠はありません。
例外として大豆イソフラボンには女性の更年期症状やのぼせ・肩こりなどの軽減に役に立つデータがそろっているようです。たくさん大豆製品を摂取できればいいのですが、効率よくイソフラボンをとりこめる栄養補助食品としてエクオール(商品名エクエル)は当院でもおすすめしています。女性の手指の痛み、変形予防(腱鞘炎、ヘバーデン・ブシャール結節、手根管症候群など)にも効果があるといわれています。ただし数ヶ月飲んでみて効果が実感できなければ終了してください。保険が効かないため1ヵ月4,000円ほど費用がかかります。
サプリメントばかりにこだわらず、普段の食事で米、小麦、砂糖などの炭水化物を取り過ぎず、肉、乳製品(チーズ、ヨーグルト)、卵、旬の野菜をふんだんに使った「おかず主体」の食事によって動物性たんぱく質、鉄分、良質の油の積極的な摂取をこころがけるほうが安上がりで健康によいのです。
2024年10月1日改訂
(その7)「日赤?それとも高島市民病院?」
「日本人は大病院指向が強い」とよくいわれます。「大きな病院にいって詳しく検査をしてもらわないと、診てもらったきにならない」とか、「大きな病院のほうが新しくてよく効く薬がもらえる」といった理由からでしょうか。
最近は大きな病院をいきなり受診すると通常の診療費以外に余計な料金(初診の場合は5,500円!)をとられたることが多くなってきています。また、紹介状(正確には「診療情報提供書」といいます)がないと診てもらえないという病院・診療科も出てきています。これは大病院が軽症の患者さんで混雑して重症の患者さんに手厚い治療ができなくなっているため国が病院と診療所の連携強化を促す施策をおこなっているからです。
病気になった場合、まずは診療所・クリニックを受診していただき、病気をふるいにかけ、重症な患者さん、診断のつかない患者さん、手術が必要な患者さんには診療所から紹介状をお渡しし、病院で診察・治療をうけていただき、病気が軽くなったら診療所にもどってきて普段のお薬を処方してもらうという流れが上手な医療機関のかかり方だと思います。
当院は高島市民病院、大津赤十字病院、滋賀県立総合病院(旧成人病センター)の「かかりつけ医登録医療機関」になっていますので、電話とFAXですぐに予約をとらせていただきます。また、マキノ病院、今津病院、琵琶湖大橋病院、滋賀医科大学(私の出身大学です)附属病院などにも随時紹介させていただいております。事前予約もとれます。当院の治療だけでうまく病気が改善していないとき、検査を希望されるときには遠慮なさらずにお申し出いただければと思います。
赤十字病院の受診を強く希望される患者さんがおられますが、整形外科に関しては高島市民病院、赤十字病院とも京都大学の医局から派遣されている先生方が診療されており、検査器械も同レベルですので、当院ではよほど専門性の高い病気をのぞいて、高島市民病院を受診されることをおすすめしています。岡本剛副院長先生はとても親切で丁寧な診療をしてくださいます。
最後に蛇足ではありますが、外来担当の医師は朝からぶっつづけで診療をしておられますので、最後のほうは当然疲れがでます。診療受付終了間際ぎりぎりに受付するよりは余裕をもって早めに受付されることをおすすめします。
2024年10月1日改訂
(その8)「痛み止めはその場しのぎ?」
整形外科の外来ではいわゆる「痛み止め」とよばれる薬をよく処方します。また、「痛み止め」の注射もします(当院ではトリガーポイント注射とよばれる注射をよくうちます)。そういう場面で多くの患者さんから「痛み止めって一時的なものなんですよね?」とか「知り合いの人から注射ばっかりしてたらあかんといわれたんやけど」とたずねられますが、私はそのようには考えていません。ぜひその「知り合い」の方には「なんであかんの?」と尋ねてみてください。明確な答えはかえってこないと思います。
腰や膝や肩などが痛いとき、「過労」が原因の場合は多少の「安静」は必要ですが、その後はすこしでも動くほうが早く治ります。ところが動こうとしても痛み止めなしでは痛みのために動かす意欲がでないでしょう。そこで痛み止めを使って体本来の動きをさせてやると体に蓄積した痛み物質が減少し治るスピードがはやまるわけです。
また、痛みがなおりにくい状態の人の多くは「痛みの悪循環」におちいっていることがあります。「痛いから動かしたくない」→「動かさないからますます痛み物質が体に蓄積する」→「さらに痛みが増強する」という状態です。
この痛みの悪循環におちいっている状態から回復するためにはたとえ一時的であっても痛みがない時間を作ったほうがよいのです。
例え話をしましょう。調子の悪い(動作がおかしい)スマホやパソコンをもとに戻すとき、どうしますか?多くの方はいったん電源をおとして再起動させるでしょう。スマホやパソコンを使わない世代の人はピンとこないかもしれませんね。調子の悪い電気製品(うつりの悪いテレビなど)があったらどうしますか?いったんコンセントをぬいて再度つなぎなおしたというご経験はないでしょうか。「痛み止め」というのはこのような電気製品の動作の不具合をなおす作業に相当する働きがあるのです。
もちろん痛み止めの薬にはいろいろと副作用があります。胃腸の具合が悪くなったりすることもあるでしょう。昔にくらべて最近の痛み止めは副作用がおこりにくくなっていますが、心配な方はその旨お伝えくださればその方にあった痛み止めを選ばせていただきます。漢方薬の痛み止めもあります。また慢性に続く痛みに対して以前とは異なるタイプの痛み止めも登場していますので、試してみたい方は診察の際におっしゃってください。
2024年10月1日改訂
(その9)学生さん、診察室へはおひとりで!
整形外科ではスポーツ中の怪我を扱うため、下は小学生から上は大学生まで学生さんの治療をする機会が多いのですが、年々、学生さん自身の症状(どのようなことをして、いつから、体のどの部位がどうつらいのか)を説明できず、付き添いのお母さん、おばあさんの顔をちらちらのぞきみながら一言も言葉を発さない子供さん、学生さんが多くなっているように思います。
親御さんに一言、「かわいい子には旅をさせよ。」です。親はほとんどの場合、子供より先に死にます。親が死んだ後、自力で生きていくことができる人間に育てることが親の義務なのです。
子供さんおひとりで歩けるようでしたら、まず診察室にはご本人おひとりではいってもらってください。名前をよばれたら本人が返事するようご指導ください。親御さんがいないほうがご本人がかえっていろんな相談ができる場合もありますし、こちらも親身になって治療に臨めます。
診療の結果をおしりになりたい場合はご本人に病名をかいたメモもお渡しすることもできますし、少々難しい説明しないといけないことがあれば、親御さんにも声をかけさせていただき診察室にて追加説明をさせていただきます。
高島市では義務教育をうけている学生さんの自己負担金が免除されています。ですから保険証と福祉受給者証の2枚を本人にわたせば窓口でお金は不要です。ひとりで医者にかかるようになるというのも立派なこども教育だと思います。
それから子供さんの間食についてですが、スナック菓子、パン、おにぎりなど炭水化物主体のものよりも卵、肉、チーズ、ナッツなどタンパク質が多く含まれるものをおすすめいたします。コンビニでおやつを選ぶなら「おにぎり」よりも「揚げ鶏」です。
2024年10月1日改訂
(その10)喫煙は痛み治療にも不利ですよ
あなたはたばこを吸われますか?
昔なら、紫煙が目にしみて、眉間にしわをよせる仕草はかっこよかったかもしれません。また起き抜けの一服、食後の一服などやめられないとおっしゃる方は多いのではないでしょうか。
しかし、医師として断言します。「喫煙は百害あって一利無し」です。
肺・喉頭・食道がん、関節リウマチなどの発症リスクを高めるだけでなく、肺の細胞が破壊されておこるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の原因となり、将来、酸素ボンベを肌身離さず持ち歩くことになる方もたくさんおられます。整形外科的にいっても喫煙は痛み・しびれ・キズの回復などに時間が余計にかかることになり、おすすめできません。喫煙は疼痛に関する神経回路を変化させるため、非喫煙者と比べて体の痛みレベルが高くなり、日常生活に支障が出やすいという調査結果もあります。
「たばこは好きなだけ吸いたいけれども病気はなおしてほしい。」とおっしゃるのは「酒をやめずに肝臓をよくしてほしい。」というのと同じです。医者の立場からするとちょっと虫が良すぎるという感じです。「先生、わたしは好きなたばこも我慢します。ですから痛みをとってください。」とおっしゃっていただける方は医者のほうも「よっしゃ、そしたらこちらもがんばって治療するわ!」という気持ちになるものです。
たばこ1日1箱吸う人が禁煙に成功すれば1年に20万円の貯金ができる計算です。「たばこは税率が高いので税金をたくさんはらってやっているのと同じや」と胸をはるかたがたまにおられますが、将来、肺炎やCOPDになって酸素療法が必要になれば、高額な医療費(税金でまかなわれています)を無駄遣いすることになります。
「タバコをすうとストレスが緩和される」とおっしゃる方がおられますが、ニコチン切れの禁断症状が緩和されるためイライラしなくなっているだけです。
たばこをやめるのに最近は禁煙外来が開設されている病院をみかけるようになりました。一度、受診してみたいという方は紹介状をお渡ししますのでご相談ください。
この文章を読んで、「禁煙してみよう!」と思われた方、まずは心の準備として「何月何日から禁煙する!」という気持ちを持ってみてください。
2024年10月1日改訂
(その11)卵は1日1個まで?って本当?
あなたはまだ「卵は1日1個まで」派ですか?私は「1日3個」派です。
スーパーの特売日でなくても卵は1個20円くらい手に入れられるすぐれた栄養食材です。1日1個なんてケチくさいことをいっていてはいけません。
「卵1日1個派」の言い分は「卵を食べ過ぎるとコレステロールがあがる」というものでしたが、この説はすでに間違いであったことが学会レベルで発表されています。口からコレステロールをいれると血中のコレステロール値があがるわけではないのです。全く同様に油分を口からいれたら血中の脂肪値があがるわけでもありません。良質の油・たんぱく質をしっかり摂取することは脂肪を燃えやすくしてくれるのです。近頃、新聞などでとりあげられることが多くなったフレイル(虚弱状態)予防にも卵1日3個を推奨します。ちなみに朝・昼・夜、毎食20gのたんぱく質摂取が推奨されていますが、卵1個に6gのたんぱく質を含んでいます。
血中のコレステロールは、過労、睡眠不足が続いたときや強いストレスをうけたときに上昇します。中性脂肪が高くなるのは炭水化物の過剰摂取が続いたときです。ためしに血液検査の前の3日間、白いご飯、麺類をいままでの半分量にして過ごしてみてください。ちゃんと中性脂肪の値がさがりますよ。ただし、タンパク質・脂質はしっかり、いつもより多めにとってください。
あと、不足しがちなのは鉄分です。昔は調理用具に鉄鍋がありましたし、鶏のレバーなどを食べる習慣があったのですが、それがなくなってきているのも一因でしょう。鉄分は赤身の肉に豊富に含まれているので、お肉はしっかりたべてください。
昔からいわれてきた「バランスのよい食事」というのは実は何の科学的根拠もありません。
【おおいに食べるべきもの】
肉・卵・チーズなどの動物性たんぱく質、大豆・豆腐などの植物性たんぱく質。お肉は脂身でもお魚でも大丈夫です。鉄分を多く含んだ葉野菜、きのこ類もおすすめです。
【量をほどほどにすべきもの】
くだもの、根野菜(かぼちゃ、にんじん、じゃがいも、さつまいもなど)
【食べる量をへらしたほうがよいもの】
麺類、お米、もち、パン、和菓子
ただし、糖尿病の治療としてすでに血糖降下剤、インスリンなどを使っておられる方は糖質(炭水化物)を摂取することを前提として薬が選ばれていますので、勝手に糖質をへらさず、主治医にご相談ください。
2024年10月1日改訂
(その12)「こむらがえり」って予防できるの?
整形外科の外来では「こむらがえり」でお困りの方をよくみかけます。「こむら」とは漢字で「腓」と書き、「ふくらはぎ」という意味です(「腓(ひ)骨(こつ)」というとふくらはぎ外側の骨のことです)ので、本来は「ふくらはぎが攣(つ)る」ことをいうのですが、体のあちこちの筋肉(指、肩、首、背中など)が急に収縮し攣った状態の総称としても「こむらがえり」という言葉は用いられます。
こむらがえりは、筋肉が血流不足になり、ヒーっと悲鳴を上げているときにおこります。たとえば、運動・仕事をしすぎた時、大量の汗をかいた時、急に暑く(または)寒くなった時、まったく運動をしなくなった時、お酒をのみすぎて脱水になった時など筋肉が変調したときによくおこります。
こむらがえりがおこったときはすぐにおこったほうの足の裏全体で地面か壁をギュッと押しつける動作をしてみてください。治療薬としては「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」という漢方薬が大変有名です。これは即効性があり、こむらがえりがおこってすぐに服用すると10分ほどで効いてきますので、こむら返り後の筋肉痛にも効果あります。私もゴルフのラウンド中、こむら返りがおこりそうになるときにすぐに飲みます。また、予防効果もありますので、早朝から明け方におこりやすい方は寝る前に服用するとよいでしょう。ただし、この薬を1日3回飲み続けていると副作用(血圧があがったり、体がむくんだりします)が出やすいので注意が必要で、1日1回程度の使用が無難だと思います。他にいわゆる「ギックリ腰」も腰の筋肉の急な痙攣であることが多いので、芍薬甘草湯は効果があります。
頓服では無く1日3回飲むタイプの漢方でこむら返りを予防する方法もありますし、漢方が苦手な方は筋肉の緊張をゆるめる錠剤の薬もありますので、診察室でご相談ください。
栄養の面から考えてみると、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄などミネラル(電解質)といわれるものの異常が筋肉の状態を左右しますので、極端な食事の偏りによってひきおこされる可能性もあります。塩分を厳格に制限しすぎている場合もおこりやすいと考えられますので生活習慣の振り返りも必要でしょう。肉・卵・チーズにはたんぱく質、ミネラルが豊富に含まれますので、積極的に食べるようにするとよいでしょう。
また、青竹踏みでふくらはぎをストレッチしたり、入浴の際、浴槽内で正坐をして足関節周囲のストレッチをしたりするのもよいでしょう。
2024年10月1日改訂
(その13)「胸・あばら」をぶつけられた方へ
当院には毎日のように、日常生活の中で胸・あばらをぶつけて痛みが続いているという方がいらっしゃいます。脚立からおちた年配の方、スノーボードでこけた若者、お風呂掃除中にすべって浴槽のへりでぶつけた主婦の方など多種多彩です。
「骨がどないかなってへんか」をとても心配される方が多いのですが、肋骨の骨折は肺とかさなっているため検査にうつりにくいのが特徴です。軟骨の損傷ならなおさらで、軟骨はレントゲンを通り抜けてしまうため、真っ暗にしかうつりません。
ですから、「咳・くしゃみをして痛い」「笑うと痛い」「痛いほうを下にして横になると痛い」といった症状があれば、肋間筋(ろっかんきん)(肋骨と肋骨の間にある筋肉)のケガか、肋骨・肋軟骨にヒビがはいっている(ヒビでも骨折という病名です)と診断します。また、ケガをして数週間たってからはじめて骨折がみつかる(新しくできた骨がうつってくるのでわかります)こともまれではありません。ですから当院では初診時に積極的にレントゲン検査をすすめてはおりません。ただし、骨折の有無にかかわらず、だいたい3週間から4週間で自然に修復され、痛みが消失しますのでご安心ください。
肋骨(ろっこつ)(あばら骨)は心臓や肺といった内蔵をまもるための骨ですが、肺に極めて近いため、血流が豊富でケガからの回復が早いのです。
車にはねられるような強い衝撃が加わり、肋骨が3、4本折れている場合は肺の損傷がおこり、肺の中に血液がたまる血胸という状態となり、入院が必要となりますが、当院に自力でおこしの方にこれほどのダメージがおこることは極めてまれです(受傷直後に救急車で運ばれるのが一般的です)。もちろん、CT、MRIなどの精密検査が必要と判断した方は、当院から病院へ紹介・予約手続きをさせていただきます。
治療は痛み止めやシップ薬を10日ほど使えば、薬を必要としない程度に痛みがひいてくるのが一般的ですが、ある程度の痛みがながびくこともあります。そういった場合はバストバンドという固定帯を使用したり、物理療法(患部にマイクロ波を照射します)をしたりしますので、症状を診察室でお申し出ください。
受傷当日の入浴はあまりおすすめしません(あたたまることになって痛みが増すことがあります。)が、受傷後しばらくたってからの入浴はまったく問題ありません。また、軽作業程度の仕事も問題ないことも申し添えておきます。
2024年10月1日改訂
(その14)高島市医師会長に就任し、2年ちょっとが経ちました
2022年(令和4年)5月に高島市医師会の会長職を拝命し、職務を遂行中です。
「医師会」というのは地域住民の方々と市内の各医療機関(病院、診療所)や行政との橋渡しをする会だと認識しています。例えばワクチン接種を市役所と連携して実施したり、学校医・幼稚園医・保育園医を会員で分担して子供さんの健康の相談窓口になったり、災害がおこった際の医療の指揮をとったりする役目です。市内の各所で健康相談、出前講座を開催したりもしています。また、日本医師会、滋賀県医師会と連携をとって県の医療行政との橋渡しも行っております。
これらの業務を円滑にすすめるために各種機関との調整会議が頻繁に開催され、その会議に出席して会員に伝達するのが会長の主な役割です。ですので、通常の診療業務の合間に会議に出席する必要が多々ございます。そのため、当院の通常の診療開始が遅れたり、急なお休みをいただいたりして患者さんにご迷惑をおかけすることがあると思います。患者さんファーストの立場はかわりませんがこれからしばらくの間、あたたかく見守っていただけるとありがたいです。臨時休診などのお知らせは当院のホームページにて随時行っておりますのでご覧ください。
どうぞよろしくお願い申し上げます
2024年10月1日作成